会社概要・基本情報
モデーアジャパン合同会社は、アメリカ・ユタ州に本社を持つModere Inc.の日本法人として、2015年4月に設立されました。前身はニューウェイズジャパン合同会社で、2001年から23年間にわたり日本市場で事業を展開していました。
代表者は大井盛夫氏(後に狩野元滋氏)が務め、本社は東京都港区芝公園に構えていました。資本金は1,000万円で、HSBC東京支店を主要取引銀行としていました。
しかし、2025年4月12日に突然事業終了を発表し、グローバル規模での企業活動を停止しました。この決断は関係者にとって予期せぬものであり、業界に大きな衝撃を与えました。
事業内容・ビジネスモデルの詳細説明
モデーアは「ソーシャルリテール」と呼ばれる独自のマーケティング手法を採用したネットワークビジネス(MLM:マルチレベルマーケティング)企業でした。
従来の対面勧誘中心のMLMとは異なり、SNSやデジタルプラットフォームを積極的に活用し、製品愛用者が自然な形で口コミや体験談を発信することで流通を拡大する仕組みを構築していました。
このビジネスモデルは「連鎖販売取引」として法的に認められた合法な事業形態で、会員は製品の流通に応じて報酬を得ることができました。
特徴的だったのは、強引な勧誘や訪問販売を避け、消費者が自らの意思で購入を決められる環境づくりに注力していた点です。
取扱商品・サービスのラインナップ
モデーアが展開していた製品カテゴリーは、コラーゲンサイエンス、パーソナルケア、ヘルス&ウェルネス、ハウスホールドの4つの主要分野に分かれていました。
人気商品には「モデーア ミネラルソリューションズ」「モデーア トゥースペースト」「モデーア マウスリンス」「モデーア シャンプー」「モデーア チョコレート ミールリプレイスメント」などがありました。
これらの製品は「LIVE CLEAN “美しく生きる”」という企業理念のもと、安全性を最重要視した成分選定と製法にこだわり、「何を入れるか」よりも「何を入れないか」を優先する開発姿勢で作られていました。全商品の全成分を公開するなど、透明性の高い製品づくりが特徴でした。
報酬プラン・システムの説明
モデーアは「ハイブリッド型」の報酬プランを採用していました。これはブレイクアウェイ方式とユニレベル方式を組み合わせたもので、初心者から上級者まで幅広い会員が稼ぎやすい設計でした。
会員タイプは、本格的なビジネス展開を目指す「ソーシャルマーケター会員」と、愛用者として気軽に口コミ活動を行う「カスタマー会員」の2種類に分かれていました。
ソーシャルマーケター会員には、カスタマー基準の「プロモータータイトル」(8段階)とソーシャルマーケター基準の「ビルダータイトル」(12段階)、そして実績に応じた11種類のボーナスが用意されていました。
報酬は製品の流通量に応じて発生し、組織の成長とともにレバレッジの効いた権利収入を目指せる仕組みでした。
会社の沿革・歴史
モデーアの歴史は1985年まで遡ります。創業者のトム・モウアー、ディー・モウアー夫妻がイメージ社を設立し、1992年にニューウェイズに社名変更しました。
日本には1996年に上陸し、2001年10月にニューウェイズジャパンとして正式開業しました。2000年代前半には急成長を遂げ、2006年8月期には過去最高の670億円を記録し、業界第3位の地位を築きました。
しかし2008年2月に経済産業省から3ヶ月間の業務停止命令を受けるなど困難も経験しました。2015年4月に「Modere」ブランドとして再出発し、モデーアジャパンに社名変更。ソーシャルリテールという新しいマーケティング手法を導入しましたが、2025年4月12日に突然の事業終了を迎えました。
市場での位置づけ・業績
事業終了前のモデーアは、日本のMLM市場において年間売上約140億円を記録し、国内トップ10に入る大手企業でした。特徴的だったのは、総売上のうち一般消費者(カスタマー)による売上が65%を占めていた点で、これは他のMLM企業と比較して非常に高い比率でした。
この数字は製品の品質の高さとリピーター率の高さを示すものでした。2019年の時点で、ソーシャルマーケターによる売上比率は37%に対し、カスタマーによる売上は63%に拡大しており、真の愛用者ベースでのビジネス展開ができていました。
しかし、市場競争の激化、マーケティング戦略の課題、資金繰りの悪化などが重なり、最終的には事業継続が困難となりました。
特徴や強み
モデーアの最大の特徴は、業界に先駆けて導入した「ソーシャルリテール」でした。従来のMLMが禁止していたSNS活用を積極的に推進し、製品愛用者がリアルな使用体験を自然に発信できる環境を整えました。
これにより強引な勧誘や押し売り感を排除し、消費者が自分の意思で購入を決められる健全な流通を実現していました。また、製品の安全性への徹底したこだわりも大きな強みで、少しでも懸念のある成分は使用しない厳格な基準を設けていました。
口コミサイト@cosmeでも高評価を獲得し、2019年モンドセレクション銀賞、2021年クリーンビューティーアワード1位など、第三者機関からの評価も高く、製品力の確かさが証明されていました。
会員・販売員の支援体制
モデーアは会員の自主性を重視した支援体制を構築していました。ノルマを課さないマイペースな活動を推奨し、個人の生活リズムに合わせたビジネス展開が可能でした。
ソーシャルマーケター向けには段階的なタイトル制度を設け、成長段階に応じた目標設定とモチベーション維持をサポートしていました。
また、カスタマー会員制度により、ビジネス目的でない愛用者も製品を割引価格で購入でき、気軽に口コミ活動に参加できる環境を提供していました。
定期的な表彰イベント「SRC(ソーシャルリテールカンファレンス)」の開催など、コミュニティ形成にも注力し、会員同士の交流と学習の機会を提供していました。教育面では、健全な活動方法や法令遵守の重要性について継続的な啓発活動を行っていました。
法令遵守への姿勢・コンプライアンス
モデーアは2008年の業務停止命令を受けた経験を踏まえ、コンプライアンス体制の強化に真剣に取り組んでいました。ソーシャルリテール導入時には、特定商取引法や薬機法などの関連法規を厳格に遵守する仕組みを構築しました。
会員に対しては、製品の効能効果について誇大な表現を避ける指導を徹底し、医薬品的な効果を謳うことを禁止していました。
また、強引な勧誘や金銭目的の不適切なアプローチを防ぐため、教育プログラムや監視体制を整備していました。公益社団法人日本訪問販売協会にも会員として所属し、業界全体の健全性向上に貢献していました。
SNS活用においても、ガイドラインを設け、適切な情報発信について会員への指導を行っていました。
社会貢献活動・CSR
モデーアは「未来の子供たちに残せる地球を」という理念のもと、環境に配慮した製品開発と企業活動を行っていました。安全で持続可能な成分の選定、環境負荷の少ない製造プロセスの採用など、環境保護を意識した取り組みを推進していました。
また、製品の品質向上と安全性確保を通じて、消費者の健康と美容に貢献することを社会的使命として位置づけていました。ソーシャルリテールというビジネスモデル自体も、消費者の選択の自由を尊重し、より健全な商取引文化の創造を目指すCSR活動の一環でした。
地域コミュニティとの連携や、会員による慈善活動の支援なども行っていましたが、具体的な規模や詳細については限られた情報しか公開されていませんでした。
成功事例・体験談
モデーアでは多くの会員が製品愛用者として、また収入を得るビジネスパートナーとして活動していました。
特に製品の品質に満足した愛用者が自然に口コミを広げ、カスタマーネットワークを拡大させる事例が多く見られました。ソーシャルマーケターの中には月収数十万円以上を達成する成功者もおり、主婦や会社員が副業として取り組みながら安定収入を得るケースが報告されていました。
製品面では、敏感肌の方がモデーア製品で肌トラブルが改善したという体験談や、健康食品で体調が良くなったという報告が多数寄せられていました。
ただし、成功事例の一方で、期待したほど収入が得られなかったり、人間関係のトラブルに発展したケースもあり、個人差が大きいビジネスモデルでもありました。
業界内での評判や受賞歴
モデーアは製品の安全性と品質において業界内外から高い評価を受けていました。
主な受賞歴には、2018年サプライサイド・ウェスト米国「最優秀ウェイトマネジメント製品賞」(モデーア トリム)、2019年モンドセレクション銀賞(ウェイトマネジメント製品)、2020年ビューティーショートリストアワード、2021年クリーンビューティーアワード アイケア部門1位などがあります。
これらの受賞は、製品の成分安全性、効果、品質管理体制が国際的な基準を満たしていることを証明するものでした。業界内では、従来のMLMにイノベーションをもたらしたソーシャルリテールの先駆者として評価される一方、過去の業務停止命令の経歴から慎重な見方もありました。
しかし、近年は大きなコンプライアンス問題もなく、安定した企業として認識されていました。
今後の展望・計画(事業終了後の状況)
2025年4月の事業終了後、モデーア製品の愛用者や販売員にとって大きな問題となったのは、製品の継続供給でした。
この状況を受けて、アメリカのシャクリー社がモデーア事業のほぼ全てを買収し、2025年6月27日から日本シャクリーを通じてモデーア製品15品目の販売を開始しました。
これにより、愛用者は引き続き一部の製品を購入できるようになりました。ただし、報酬プログラムやビジネス機会については大幅な変更があり、元のモデーアシステムとは異なる条件での参加となります。
今後の展望としては、シャクリーブランドの下での新たなスタートとなりますが、モデーア時代のコミュニティやネットワークの多くは分散し、業界全体にとっても一つの転換点となっています。